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2009/11/26 更新

Academy of Osseointegration:歯科インプラントの予後に関するGuideline,JOMI.23-3,471-473, 2008

歯科インプラントは、歯牙再建の一手法として受け入れられるようになり、歯科医師から患者へは喪失歯の再建手法として紹介されるようになった。歯牙再建を必要とする患者へは、歯科インプラントについて、詳細な紹介がされるべきであり、それは潜在的利益、長期生着統計、リスク、潜在的合併症が含まれる。加えて、歯科インプラント治療はメインテナンス療法と長期にわたるフォローアップが必要であり、かかる意味で患者自身の責任も歯科医療従事者同様重要であることも説明されなければならない。 幸いにも多くのエビデンスに基づいた研究成果があり、歯科医療従事者はこれらの成果を用いて患者への説明を行なうことができる。そして、歯科医療従事者はインプラント治療に対する厳しい質問に対して、以下のガイドラインの中からその回答を見いだすことができる。このガイドラインは現代歯科インプラント学の科学的基準および留意点に関する2006年AO 合意会議で決定したものを基盤に作成された。

定義:
歯科インプラントの定義(歯科補綴用語集と整合性をもたせた):異種材料を粘膜下および骨内の口腔組織に植立し、固定性あるいは可綴性の歯科補綴物に維持および支持をもたせた補綴装置を言う。

治療のゴール:
歯科インプラントの治療のゴールは喪失歯の再建を支持し、患者に快適性、機能性、審美性を与えると同時に、口腔およびその周囲組織の維持に対して行なっているメインテナンス治療を助けることである。

術前考察
まず患者は、治療開始に先立って、適切なケアを確実にするために、歯科医師によって評価されなくてはならない。歯科インプラントを治療の選択肢に入れる場合は、患者に対する評価の過程で、最低一人、できれば複数の歯科医療の専門家が関与するのが望ましい。参画するメンバーの責任範囲が明確である組織的に組み立てられた治療計画を作り上げ、それに基づき治療が開始されなければならない。インプラント患者の評価は次のステップを踏んで行なわれるべきである。
・ 広範囲に医学的、歯科医学的病歴を記録し、これらの情報が各々インプラントをおこなうのに妥当であるか理解する。
・ 周到な口腔外、口腔内の診査を行なう。これには歯、補綴物、歯周組織、口腔粘膜、残存歯槽堤、審美性の要求程度に関する細部にわたる評価を含む。
・ 咬合と今後行なって行く治療との関連性の評価
・ さらなる適切な評価が必要かどうか確定し、必要なときに所見報告ができるようまとめておく。
・ 病歴および検査過程で得られた情報を突き合わせ、評価し、正確な診断を導きだす。
・ 検査所見、診断、治療計画に関して、患者と口頭もしくは文書で明確に説明する。
・ 患者がとるべき選択肢、インプラントを含む、に関してはエビデンスに基づいたものであることに注意を払う。
・ 治療計画の策定に歯根再建が含まれる場合は、患者の予防医学的、機能的、審美的、心理学的、経済的要求を勘案する。
・ インプラント歯科医学と他の臨床歯科医学との整合性を理解する。
・ 固定性補綴物と可綴性補綴物の違いを理解し、いずれの補綴物を選択するか評価する。
・ 異なる種類のインプラント植立法に関する最新のエビデンスを理解する。
・ インプラントを植立し、補綴する、最適のタイミングを検討し、患者に推奨する。
・ 提案した治療に対する患者のインフォームドコンセントをとる。
・ インプラント治療に先行して行なわれる治療に関して、これを患者に提供し、また結果を参照し、再評価する。
・ 複雑な症例では、チームのメンバーが熟考された治療にふさわしい教育、トレーニング、経験、資格を有し、また適切な専門家に任せる。

ビスフォスフォネート製剤の静脈投与を受けている患者は、口腔外科的処置の術後に顎骨壊死(ONJ)を発症するリスクが報告されてきた。現在ではアメリカ口腔顎顔面外科学会を含む多くの学会が、ビスフォスフォネート製剤の静脈内投与を受けている患者に関しては、すべての期間において、口腔骨組織などへの予定手術を行なわないよう推奨している。この薬の半減期に関してはまだ合意が得られていないため、投薬休止はONJのリスクを取り除いたり軽減させることにはならない。ビスフォスフォネート製剤の経口投与は静脈内投与に比べてリスクは非常に低く、特に投与期間が3年未満の場合は低い。しかし短期間、低用量の経口ビスフォスフォネート投与でもONJを発症したケースが報告されている。経口ビスフォスフォネート製剤投与症例では、現在の所、インプラント禁忌ではないが、潜在リスクとしてONJが発症し得ることを説明しなければならない。ONJ発症に関する潜在リスクに関しては、アメリカ歯科医師会が要綱を定めている。

潜在的リスクファクターに関して、現代歯科インプラント学の科学的基準および留意点に関する2006年AO 合意会議の結果、喫煙はインプラントの生着率および成功率に不利な影響を与えることが示された。インプラント生着に関する喫煙の影響は、骨梁の粗な領域においてより強く現れる。 タイプ2糖尿病もインプラント生着率に悪影響を与えるが、合意会議においては、少数の研究しか渉猟し得なかったので、厳密な結論に至らなかった。 歯周炎治療の病歴はインプラント生着率には悪影響を与えなかったが、成功率には悪影響を与えた。とくに長期間経過した後で問題が起きやすい傾向があった。したがって、インプラント植立に先立つ歯周評価と適切な治療が施されるべきであると推奨される。

 

以下の補助的手段はインプラントやアバットメントの植立本数、位置、タイプ、傾斜角を術前に考慮する上で用いられる。
・ 咬合器に装着した、もしくは装着可能な研究用模型
・ 画像テクニック
・ 放射線ガイド

もしもインプラント植立が予定されている顎堤の骨質や骨量に不安がある場合や上顎洞、下歯槽神経、歯など生体構造体へのインプラントの近接が危惧される場合などは、シリアルあるいはコンビームCTが推奨される。 様々な移植治療は骨を喪失した患者にインプラント植立する上で、適切な骨質や骨量を与える上で有効であることが立証されている。現代歯科インプラント学の科学的基準および留意点に関する2006年AO 合意会議は、上顎洞骨増成術に関しては多くの報告があると報告している。インプラント植立後5年以上の長期臨床成功率、生着率は移植剤の種類に関わらず、他の総説に示されるのと同様、骨造成を行なわない、通法に比べて優れた成績を残していた。歯槽突起造成術に関しては骨誘導再生法に関するもの以外は詳細な記述や長期予後に含する研究はなかった。しかし包括的基準に合致する研究は比較検討可能であるし、インプラントを支持する上で望ましい成果を上げていた。歯槽突起造成術はより手技に敏感な手法であろうし、インプラントの生着は移植された骨よりもインプラントを支持する残存骨の機能によるものであるようだ。より深く、より長期の、より多数の施設による研究が、インプラントの生着を支持するための骨増成術に対するさらなる考察には必要である。

インプラント植立
インプラント植立が必要な患者に対する歯科補綴学的観点から,欠損部に隣接する歯の状態や軟組織の状態が、骨内インプラントによる治療の予知性を高める上で重要である。たとえば、患者の歯冠乳頭が著しく退縮している場合は、インプラント治療が患者が既に失った乳頭を回復できる可能性はほとんどない。同様に評価は以下の事項も含む。
・ 喪失歯の和と位置
・ 植立するインプラントの和、種類と位置
・ 現在のあるいは再建する咬合構成
・ 補綴計画の種類とデザイン

手術法は、術前評価と用いられるインプラントの種類に基づいて行なわれる。
・ 無菌的処置
・ 手術用テンプレートの適切な使用
・ 適切な術後指示

インプラントの植立には段階的治療法がもっともよく用いられる。
しかしインプラントは抜歯と同時に植立し、即時加重されることがあるかもしれない。
現代歯科インプラント学の科学的基準および留意点に関する、2006年AO合意会議は、その時点で報告されている研究の条件が様々に異なるため、治癒したサイトに対して植立されたインプラントと即時インプラントの生着率の違いは比較できなかった。ほとんどの研究報告は即時インプラントは高い生着率を示すと記述している。即時インプラントは治療期間を短縮し、手術も少なくて済む。しかし、即時インプラント埋入後に軟組織および硬組織の合併症を引き起こす懸念がある。臨床医は、解剖学的要素が即時インプラントの機能的、審美的成果に重要であることを念頭に、その利点と欠点を考察し理解すべきである。最も長く荷重までの期間をおいた方が望ましい傾向にあるのに関わらず、インプラントの結果に影響を及ぼす要因が現在の所定かでないため、いずれの総説も確たる推奨をし得なかった。存在する限られたデータは、オトガイ孔間に複数本のインプラントを植立し、それを即時もしくは早期に加重させることは遅延荷重の替わりとして合理的治療法であると考えられた。しかしながら、与えられた臨床条件の中での即時あるいは早期荷重による治療法は、その特異な解剖学的、生体力学的、そして患者側の要因、臨床医の力量を勘案して選択されなければならない。

術後処置
補綴に先立って以下の要件が検討されなくてはならない。
・ 軟組織および硬組織の量、質および健康
・ インプラントの安定性
・ インプラントの位置とアバットメントの選択
・ 咬合評価
・ 口腔衛生評価

インプラントに対する補綴時期の判断は様々な要素に基づく。臨床医は以下のことを理解しなければならない。
・骨傷治癒に対する骨質の影響; 進行する骨統合に与える微小動揺の影響
・歯列弓内の位置に関連する応力分散
・移植に関連したリスクと利点
・一般的な治癒期間

短期および長期予後に影響を与えるその他の要因。
  インプラントが補綴時期に至ったと判断されたら、臨床医は以下のことを考慮しなければならない。すなわち
・2次手術の適切な手法
・荷重をかける時期
・荷重方法
・応力分散の程度
・補綴物の材質
・咬合構成
・補綴物の維持
・ナイトガードの必要性
どのような維持方法で補綴物を固定するかは考え方の問題である。補綴物が咬合面からのスクリューで固定されようが、セメントで固定されようが、暫間セメントで仮着されようが、剛着されようが、インプラントと補綴物の連結はつねに緩む危険性がある。

インプラントのマネージメント
インプラント、周囲組織および口腔衛生状態の定期的評価は歯科インプラントの長期成功に不可欠である。
インプラント評価における考慮点は、
・ 口腔衛生状態
・ 歯周組織の臨床所見
・ インプラントおよびインプラント周囲構造のエックス線学的所見
・ 咬合の状態、補綴とインプラントの安定性
・ プロービングデプスと歯槽骨レベル
・ プロービング時の浸出液と出血の有無
・ 適切なメインテナンス間隔
・ 患者の快適性と機能

成績評価
成功したインプラント治療の望ましい成績とは、安定しており、機能的であり、審美性も患者が満足できる程度に回復された状態でメインテナンスされていることを言う。インプラント治療において望ましい成績以外のものとは、
・ インプラントの動揺および喪失
・ 頑固な痛みと、あるいは機能喪失
・ 進行性の骨吸収
・ 持続するインプラント周囲の放射線透過性
・ 神経症状あるいは知覚異常
・ 頑固で制御できない炎症および感染症
・ プロービングデプスの増加
・ インプラントへの補綴ができない状態
・ 補綴パーツの破折やゆるみ
・ 咬合面素材の破折
・ 補綴の不安定
・ インプラントの破折

インプラント合併症の病因は複合要因によることがあり、インプラントの構成要素と組織の問題の双方を含む。ルーティンな評価が合併症の予防および治療の必要性を明らかにする。臨床医はリストにあげられた合併症の取り扱いに関する介入とアプローチに熟知していなければならない。
Disclaimer, Acknowledgements, Selected Resourcesは内容と関係がないので省略した。

2009年11月22日 伊藤正夫

2009/11/4 更新

スウェーデン、モナコツアー2009から2010年のトレンドを占う。

Astratech社では、Gothenburg Univ. Sahrengska Academy学部長のThomas Arbrechtsonの講義現在のホットなトピックではあった。
Astra社Osseospeed, Straumann社SLA active, 3i社Nanotiteの表面性状は作製法が異なるものの酷似しており、1から5μmの粗な表面に20から100nmの微細な突起が形成されており、いずれも親水性の表面性状をもっている。ここでOsseospeedのフッ素徐放論は大きく後退しており、できればAstraとしては発売期にそのようなアナウンスをしたことを隠したいくらいの感じであった。いずれの表面も骨伝導能にすぐれ、短期間に多くの骨接触面積を獲得することが示された。いずれの表面も来年中には厚労省認可が下りそうで、我々にも現実的なものとなる。ただしプラットフォームが変わるので、若干の器材を買い求める必要がある。
わたしはOsseospeedが2004年にパリで発表されてから20本のOsseospeedを植立したが、たしかにかなり厳しい症例や即時荷重であっても結合喪失の症例は経験していない。Nanotiteは100nm程度のハイドロキシアパタイトの結晶をチタン表面に蒸着させた製法であり、骨結合が進行すると同時に骨に取り込まれてしまい、最後はチタン表面と骨の結合が達成されるというユニークな表面性状であるだけに、現在のアパタイトコーティングインプラントの行方は混沌としてくるであろう。 
Live OperationはFacilitate(TM)を用いた無切開無剥離全顎再建症例であった。Molndal Hospitalの口腔外科医の手術であったが、手際よく行なっていた。AstraのFacilitate(TM)はNobel Guideと同じくMaterializeが作成しているが、いずれもそこそこの精度で、十分な骨幅と骨長がある症例でないと、未だ適応がないという解説であった。CTの最大の利点は定量化できるということであり、画像診断上定量化したものを口腔内に再現できないのは潜在能力の半分しか使っていないことになるので、精度の向上とこのような3Dベースのサージカルガイドの原価逓減が求められる所である。 
以前から非常に便利であろうと思っているのは、Atlantis Abutmentである。今のクラウンのCadCamをアバットメントに応用したものであるが、このシステムのユニークな点はまず理想的なクラウン形態をPC上でデザインすることから始まる。そしてその形態を再現するのに必要なアバットメント形態をPC上で決定するのである。これはネットを介してDr.-Atlantis間で情報が交換される。材質はジルコニア、チタン、ゴールド色チタン合金の3種である。ここに白金加金が入っていないことに留意すべきである。白金加金は歯肉と結合しないからである。AtlantisはAstraだけでなく主なインプラントにはどれも対応している。

モナコでは、垂直性骨造成がprecongress seminarに盛り込まれていた。GBRに関するMassimo Simion 教授がチェアマンを勤めていたが、スピーカーはオンレイグラフト1名、垂直性GBR1名であった。いずれも新見のないスピーチであったが、Simionのサマライズに骨補填剤はBiossがもっとも効果があることは、既に決着済みであるという発言に彼の研究がすべてGeistlichの援助下で行なわれていることから、この学会というよりインプラント関連学会の限界が見えてくるようなセミナーであった。またSimionはオンレイは治療処置が簡単だが、侵襲的、GBRは治療処置が煩雑だが、非侵襲的と結論づけていたが、これは立場として口腔外科医あるいは歯周病科医にとってどちらが得意かという問題であって、こういう短絡的結論は座長として見識を問われると思った。 
Good Evening AstratechではSahgrenska Academyの現歯周病学教授のTord Berghlundが昨年の彼の研究をレビューした。すなわち、Tioblast, SLA, TiUnite, Osseotiteの各表面性状をもつインプラントを雑種犬に植立し、骨結合が完了後、各々のインプラントの頚部にデンタルフロスを巻き付け、人為的にインプラント周囲炎を発症させインプラント長の1/3まで骨吸収を起こした時点でフラップオペレーションを行い、郭清を行なった所、Tioblast,SLA,Osseotiteはその時点で骨吸収は留まったが、いっぽうでTiUniteは自立的に骨吸収が脱落するまで進行して行ったという衝撃的な報告であった。以前よりTiUniteの問題は各所で指摘されていたが、実験的に証明されたのは本報告が始めてである。
Nobelbiocareもこの問題を重視しており、すでにMedtolonicからのライセンス供与を受けており、BMP2(Infuse)のインプラント表面へのコーティング技術を確立しようとしている。わたしは今から30年前にインプラント表面へのタイプ2コラーゲンのコーティングを試みたことがあるが、なかなか金属表面へのタンパク質の接着と活性の維持はテクニカルに難しい。このSessionではJan LindeとTomas Arbrechtsonの対談が面白かった。すなわちインプラントのLate Lossに関する討論であった。Jan Lindeは近年上顎唇側骨の吸収がインプラント植立いかんに関わらず生じることからLate Implantを推奨し、またインプラントの喪失が歯周炎に類似の病体によって生じることを精力的に論文にしているが、Arbrechtsonは根本的な考え方が間違っていると喝破していた。すなわちインプラントと天然歯とはまったく異なる周囲組織との結合形態をもっており、歯周病から演繹するのは見誤るという主張であった。彼の意見はインプラントは移植体であるので、インプラントのFailureは生体との適合不全の結果でって、これに関する生化学的、分子生物学的研究が進められなくてはならないと述べた。インプラントにデンタルフロスを巻く研究など何の意味も持たないとまで行ってのけた。わたしもArbrechtsonの意見に賛成する。 
Pleliminary Sessionで印象に残ったのは、インプラント即時荷重に関する疫学的研究である。インプラント即時荷重の遠隔成績に関するすべての論文を集めて、Meta analysisを行なった研究である。その結果5年後のOverall Survival Rateは90%とコンベンショナルな手法に比べて、7points程度成績が低下するという報告であった。この報告とは異なるが、ブロック骨移植、GBR, 仮骨延長法で作成した骨がいったん生着後吸収する現象は臨床上よく見られる。これはおそらく骨の分化の過程で骨芽細胞の増殖、血管網の構築、膜性骨化もしくは軟骨性骨化、層板骨の形成、骨梁の形成といった一連の分化過程で齟齬が発生し、骨組織に発展することなく、したがって生体内で確固とした基盤を築くことができず、貪食、吸収して行くのだろうと推測する。ちなみにPDGF(Gem21)には骨分化能はない。これらの事象を勘案するとインプラント即時荷重は一定のリスクを孕んだ手法であることに疑いの予知はないと思う。何故ならインプラントの骨結合とはインプラントの界面において、新生骨の完全な分化が必要だからである。またGBRとくに上顎洞内骨増成術ではどこから骨芽細胞がリクルートされるのかが大きな問題となることに留意すべきである。

2009年11月3日 伊藤正夫

2009/9/4 更新

下顎前方出血のリスク

Rosano,G.,Taschieri,S.,et al:Anatomic assessment of the anterior mandibule and relative hemorrhage risk in implant dentistry: a cadaveric study. Clin Oral Impl Res 20,8:791-795 2009より

目的: 下顎舌側正中の孔もしくは骨口のサイズと位置を評価することが目的である。

材料および方法: 60体成人屍体から採取した乾燥下顎骨において、可視的な骨口もしくは孔がオトガイ棘の上にあるのか下にあるのか、さらに下顎骨基底面からの距離を計測した。加えて他の20体の下顎に赤色ラテックスを注入し、舌下正中孔もしくは管内のラテックス標本を解析した。

結果: 合計で118の骨孔を認めた。検討した下顎骨のすべてにおいて、最低1個の舌孔を下顎正中オトガイ棘の上方に認め、それは下顎骨基底面から平均12.5±2.1mmに存在した。肉眼的解剖では、20体中19体(95%)において、血管枝が一本でもしくは数本が吻合しながら下顎正中に入り込んでいた。

写真は1個のオトガイ棘上孔に加え、2個のオトガイ棘下孔を認める。
写真は、両側舌下動脈の枝が下顎正中を穿通し吻合している。
写真は口腔底の肉眼的解剖所見:下顎前方を栄養する主血管は舌動脈およびオトガイ下動脈の枝としての舌下動脈である。舌下動脈から来た左右の枝(左右の矢印)は下顎骨正中で舌側皮質骨を穿孔している。

顎舌骨筋を穿通して来るオトガイ下動脈の枝は、口腔底にしばしば出現する。したがって、この動脈は口腔底を栄養する重要な主血管に違いない。

下顎正中における骨溝:この歯科用CT水平断は舌側オトガイ部への血管の侵入イメージを示している。

結論: 口腔底の血管はきわめて高い確立で下顎正中の舌側板を穿孔している。この事実は下顎正中の舌側皮質骨少しでも穿通すれば、出血が起こりうる。さらにわれわれは、下顎正中においては注意深い植立位置の計画が推奨し、できうればオトガイ孔間には偶数本のインプラントを植立し、下顎正中舌側板の穿通リスクを避けるのが望ましいと考える。

解説: オトガイ棘上孔の存在は、歯科用CTが普及するまで知られることは無かった。しかし、下顎正中では下顎動脈の正中での吻合が以前より知られており、その意味で、下顎正中へのインプラント植立はリスクを発生させることとなり、以前はスタンダードであった、下顎正中からの移植骨片の採骨も今は、あまり行なわれていない。私自身もこの部位で採骨し、大出血を来たし、失血性ショックに至った自験例を持っている。

伊藤 正夫

2009/8/25 更新

Zirconiaインプラントの表面性状と骨結合

Clin Oral Impl Res 20, 4, 333-339, 2009より

Strength of CAD/CAM-Generated Esthetic Ceramic Molar Implant Crowns Daniel Wolf, Dr Med Dent/Andreas Bindl, PD Dr Med Dent/Patrick R. Schmidlin, PD Dr Med Dent/Heinz L・hy, Prof Dr/Werner H. Mormann, Prof Dr Med Dent

目的: 本研究の目的はラット大腿骨における、ジルコニアインプラントの骨結合を評価することにある。

材料および方法: 2種の異なる表面性状を持ったジルコニアインプラントを、同種の表面性状を持ったチタンインプラントと比較した。チタンおよびジルコニアインプラントを42匹の雄性Sprague-Dawley系ラットに植立した。4群を設定し、平滑表面のジルコニア、粗面性状のジルコニア、平滑表面のチタン、電解化学処理粗面表面のチタンとした。28日間の治癒期間後、骨とインプラントの間の耐圧能を圧縮試験によって検索した。加えて、14日後と28日後に標本を採取し、組織学的に検討した。
原子力顕微鏡で観察した各群の表面性状
左上:チタン研磨表面、右上:ジルコニア研磨表面、左下:チタンTiUnite表面、右下:ジルコニア粗面表面

結果: 石灰化した骨とインプラントの接触面積の平均はが14日後と28日後でもっとも高い数値を示したのは、粗面表面であり、チタン36%と45%であり、ジルコニアが45%と59%であった。圧縮試験では、粗面表面が優位であったが、チタンとジルコニア間には統計学的優位差はなかった。

結論: 動物実験の範囲では、ジルコニアおよびチタンインプラント表面は組織適合性が良く、ジルコニア粗面表面はすでに効果が確認されているチタンのTiUnite表面と比べて、組織学的にも生物機械工学的結果においても差はなかった。

解説: 2008年ワルシャワEAOで、ジルコニアワンピースインプラントが発表された。ジルコニアは骨結合すると同時に、軟組織との接合も良好であるため、審美インプラントの素材として、次世代テクノロジーの期待が持たれている。既に欧米では販売されているが、日本では認可が下りていない。
伊藤 正夫

2009/8/18 更新

抜歯時に剥離した場合と剥離しない場合の歯槽骨の変化:犬を用いた実験的研究

Clin. Oral Impl. Res. 20: 545-549, 2009より

背景:抜歯後の歯槽突起の高さおよび幅径を保存または改善するために様々なアプローチが行なわれている。抜歯を粘膜骨膜剥離しないようにおこなうと良好な成績がえられるという報告もある。

目的:本研究の目的は抜歯後の骨変化を歯肉骨膜弁の剥離の存否で差があるかどうかを比較検討することである。

材料および方法:5頭の雑種犬を用いた。2本の下顎第二小臼歯をヘミセクションした。近心根は保存した。無作為に偏側の遠心根を粘膜骨膜剥離下に抜歯し、対側は無剥離で抜歯した。創はシングルスティッチで縫合した。6ヶ月後に犬を安楽死させ、標本を採取し、光学顕微鏡的に観察した。

結果:抜歯部位では根先側あるいは中間部での変化は軽微であったが、歯冠部では、大きな骨吸収が起きていた。剥離群と非剥離群ではどちらも吸収の程度に差はなかった。

抜歯前歯槽骨頂の高さ及び幅 非剥離群

結論:歯の喪失は結局は、歯槽突起の多きな吸収をもたらす。これに関して、抜歯をいかに行なうかという要素は何の影響も与えなかった。

解説:この論文に先行するJan Lindheの有名な論文がある。すなわち抜歯後そのまま放置した場合とインプラントを即時で植立した場合で、歯槽突起の吸収の程度を比較するものであった。この場合も両群に差はなかった。この意味で、インプラント抜歯即時埋入は、その後長期にわたって生じる骨吸収改造機転によって、予後不明なものになる可能性があるわけである。わたしはインプラント抜歯即時埋入では必ずGBRを併用しているが、これとても信頼できる統計学的研究はいまだない。GBRを行なうとしても、私の所の勤務医が行なった抜歯即時埋入、GBR併用症例の二次手術を行なったが、インプラント先端からネック部分まで唇側半分が露出おり、撤去した症例がある。これらの抜歯後骨吸収は、上顎前歯部では、骨の吸収、歯肉の後退、インプラントの露出といった深刻な審美障害をもたらすことがあり、初期計画において本論分の治験を念頭に置いておく必要があると思う。

伊藤 正夫

2009/5/20 更新

Bone Making

最近、クリニック間の競争激化とともに患者からの信頼を確立する為には、精度の高いインプラント治療が求められるようになりました。とくに骨欠損に対する対応は、重要です。少しのインプラント辺縁の骨欠損がポケットやインプラント周囲炎へ発展することがあり、患者が一生使えることを期待して、インプラント医療を受けるとすれば、1本のインプラント喪失が起きたとき、次は別の先生に診てもらおうと考えるのは自然な感情です。難症例でなくても, 貧弱なベッドに植立されたインプラントはトラブルの元です。
そこで近年の潮流であるBone Making が脚光を浴びているのです。今年のEAOでもBone Making関連のPrecongress Course がプログラムとして取り上げられているのは、ここ1,2年のインプラント医療の思想的基盤を繁栄したものです。
最近わたしのクリニックでは一人の患者の治療期間は以前より、延びています。即時加重や早期加重が日本ではもてはやされていますが、欧米主要紙では本法の報告をする際には、遠隔成績に関しては更なるマルチセンタースタディーが必要であると記載しなくてはならないのが現状です。いずれにしても近年廃れていこうとしている手術法として、スプリットクレスト、サイトダイレーティングとリポジショニングが挙げられます。無理やりインプラントを植え込もうという試みは合併症をもたらす可能性が高いのです。前2者は生着しない可能性が高く、最後の手術は講義で私が以前から述べていたように骨折の危険性が飛躍的に高まるのです。これに関する報告も増えています。したがってまず充分な骨を作成し、しかる後に単純にインプラントを植立するというのが近年のセオリーだということを覚えておいてください。
以下に先生方にも身近な症例を供覧します。治療期間の延長に関しては患者に事前に説明します、他院より長くかかりますからね。まずインプラントは失敗したら怖い治療法だと患者が心の底で思っていることを明確に言葉にして、インパクトを与えます。次に耐久性を獲得する為には充分なsuppoting boneが必要であり、確実な骨結合が必要であることを説明すると、たいていの人はそれはそうして下さいと納得します。

伊藤

症例1 中年男性
右下6根先病巣

抜歯即時GBR,Gem21+メンブラン使用
GBR6ヵ月後インプラントを植立した、新生骨に水平方向の骨梁が見える。

インプラント植立3ヵ月後、水平方向の骨梁の石灰化が強くなっている。
このようなOutcomeは、抜歯即時埋入で代用骨を詰め込むだけでは得られないであろう。

症例2 中年女性
抜歯即時埋入で、ソケットとフィットしない部分にオステオゲンを填入し、メンブレンで被覆した減張切開を行い歯肉を緊密に縫合した。

1次手術の3ヵ月後、近心に新生骨を観察することができる。しかし骨梁形成はまだ脆弱である。
rhPDGFとオステオゲンの間に差があるかどうかは今のところわからないが、メンブレンの固定をリジットに行うことによってオステオゲン単体でもこの程度のOutcomeを得ることができる。

2008/10/6 更新

The International Journal of Oral & Maxillofacial Implants

July/August 2008 Volume 23 , Issue 4

Strength of CAD/CAM-Generated Esthetic Ceramic Molar Implant Crowns Daniel Wolf, Dr Med Dent/Andreas Bindl, PD Dr Med Dent/Patrick R. Schmidlin, PD Dr Med Dent/Heinz L・hy, Prof Dr/Werner H. Mormann, Prof Dr Med Dent

ジルコニアアバットメントとチタンアバットメントに0.5mmと1.5mm咬合面厚のオールセラミック冠をグラスアイノマー系のケテック、レンジ系のマルチリンク、同じくレジン系のパナビアで合着して破折強度をみた。結果としては1.5mm厚で接着性のセメントの方が、破折応力が大きかった。 高野 抄

The International Journal of Oral & Maxillofacial Implants

July/August 2008  Volume 23 , Issue 4

The Influence of Abutment Angulation on Micromotion Level for Immediately Loaded Dental Implants: A 3-D Finite Element Analysis
Hung-Chan Kao, PhD/Yih-Wen Gung, DDS/Tai-Foong Chung, DDS/Ming-Lun Hsu, DDS, Dr Med Dent

インプラントの植立角度が微小同様に与える影響について検討した。
結果は25度以上の植立角度で18%の応力の増加が認め、30%の動揺度の増加を認めた。
高野 抄

The International Journal of Oral & Maxillofacial Implants

July/August 2008 Volume 23 , Issue 4

Osseointegrated Implant Failure Associated with MMP-1 Promotor Polymorphisms (-1607 and -519)
Mayra F. F. Leite/Maria C. L. G. Santos, PhD/Ana P. de Souza, PhD/Sergio R. P. Line, PhD

遺伝子MMP-1の1607番目と519番目の塩基置換がインプラントの損失に関わっていると言われているが、その検証を行った。結果としてはコントロール群に対して対象群では有意に差を認めた。早期の損失にはー1607が関与していると考えられた。しかしー519に関しては有意差を認めなかったが、MMP-1がインプラントの早期損失に関わっていることは示唆された。
高野 抄

The International Journal of Oral & Maxillofacial Implants

July/August 2008  Volume 23 , Issue 4

Implant Cast Accuracy as a Function of Impression Techniques and Impression Material Viscosity
Mary P. Walker, DDS, PhD/Dave Ries, BS2/Blake Borello, BS

インプラント印象において、その方法によって再現性に与える影響を調べた。間接的にオープントレー採取したものと、直接的にクローズトレーでプラスチックキャップを用いて採取したものを比較した結果、印象剤による違いはなく、両者に決定的な差は認めなかったがオープントレーで採取した群の方がより正確に再現できることが分かった。
高野 抄

The International Journal of Oral & Maxillofacial Implants

July/August 2008  Volume 23 , Issue 4

butment Screw Loosening in Single-Implant Restorations: A Systematic Review
Anna Theoharidou, DDS/Haralampos P. Petridis, DDS, PhD, MSc/Konstantinos Tzannas/Pavlos Garefis, DDS, PhD

シングルスタンドで植立されたインプラントにおいて、アバットメントスクリューの緩みの原因について文献的考察を行った。緩みはインプラントーアバットメントのメーカーの機構によるところが大きいと思われ、通常は既定のトルクで締め付ければ緩む事は無い。
高野 抄

The International Journal of Oral & Maxillofacial Implants

July/August 2008  Volume 23 , Issue 4

The Zirconia Implant-Bone Interface: A Preliminary Histologic Evaluation in Rabbits
Oliver Hoffmann, Dr Med Dent, MS/Nikola Angelov, DDS, PhD, MS/Fabrice Gallez, DDS/Ronald E. Jung, Dr Med Dent/Franz E. Weber, PhD

ジルコニアセラミックー骨表面での早期骨結合における組織学的検証をウサギでおこなった。結果としては、術後2、4週ではチタンとの結合状態と明らかな違いは認めなかった。しかし自然治癒との差も大きくなく今後の検討を要する。
高野 抄

The International Journal of Oral & Maxillofacial Implants

July/August 2008  Volume 23 , Issue 4

Clinical Outcome and Patient Satisfaction Following Full-Flap Elevation for Early and Delayed Placement of Single-Tooth Implants: A 5-year Randomized Study
Lars Schropp, DDS, PhD/Flemming Isidor, DDS, PhD, Dr Odont

抜歯即時埋入もしくは10日後埋入かを5年経過で比較検討した。抜歯後3-15日後に埋入すると感染のリスクを軽減できることは知られている。今回の結果からは5年後に補綴的な問題や生存率、許容範囲の粘膜レベルの低下、プロービングポケット、患者満足度を比較したが同程度であった。
高野 抄

The International Journal of Oral & Maxillofacial Implants

July/August 2008  Volume 23 , Issue 4

Conventional and Advanced Implant Treatment in the Type II Diabetic Patient: Surgical Protocol and Long-Term Clinical Results
Georges Tawil, DDS, D Sc Od/Roland Younan, DCD DES/Pierre Azar, DCD, D Sc Od/Ghassan Sleilati, MD

2型糖尿病の患者にインプラント治療を施す時の検討を行っている。良く血糖値がコントロールされたHBA1cが7.2%以下の患者であれば手術もインプラントの生着率においても問題無い。インプラントの生着率は年齢と性別、発病期間、タバコの方が重要である。歯周組織の評価であるプラークインデックス(PI)、歯肉出血(BOP)の悪化の方が合併症を引き起こす可能性が大きい。
高野 抄

The International Journal of Oral & Maxillofacial Implants

July/August 2008  Volume 23 , Issue 4

Immediate Versus Delayed Loading of Dental Implants Placed in Fresh Extraction Sockets in the Maxillary Esthetic Zone: A Clinical Comparative Study
Roberto Crespi, MD, MS/Paolo Cappar・ MD/Enrico Gherlone, MD, DDS, PhD/George E. Romanos, DDS, Dr Med Dent, PhD

上顎前歯部の審美領域で抜歯後にイミディエートローディングかディレイローディングとで臨床的に検証した。レントゲンで周囲骨の状態を比較した結果、生存率もレントゲン上も即時埋入した群の方が良い結果となった。
高野 抄

2008/7/29 更新

サイナスグラフトとインプラント治療—必要となる負荷手術の分類—

Clin Oral Implants Res. 2008 Apr;19(4)

Dental implants placed in grafted maxillary sinuses:a retrospective analysis of clinical outcome according to the initial clinical situation and a proposal of defect classification
Matteo Chiapasco
Marco Zaniboni
Lia Rimondini

上顎洞底挙上術単独もしくはそれに自家骨移植などの再建手術を併用した成績は良好であった。
伊藤先生訳

インプラントプランニングにおいて、MRIとCTの確実性の比較

Clin Oral Implants Res. 2008 Apr;19(4)

Accuracy of magnetic resonance imaging compared with computed tomography for implant planning
Marcelo F.Aguiar
Alexandre P.Marques
Antonio Carlos P.Carvalho
Marcelo G.P.Cavalcanti

インプラントプランニングにおいてはMRIのほうがCTよりも信頼性が高かった。
解説:CTに引き続きMRIがインプラント診断に導入されるようになるかもしれませんね。
伊藤

インプラント周囲角化歯肉の厚さが臨床的、免疫学的パラメーターに与える影響

Clin Oral Implants Res. 2008 Apr;19(4)

The dimensions of keratinized mucosa around implants affect clinical and immunological parameters
Hadar Zigdon
Eli E.Machtei

インプラント周囲角化歯肉の厚みと幅は臨床的、免疫学的に重要な影響を与えていた。特に審美的ゾーンにおいては薄く、狭い角化歯肉は歯肉退縮を生じ大きな問題につながる。 
伊藤

人下顎臼歯部にインプラントを植立して、即時荷重した場合と通法どうりに待機期間をおいた場合の12ヶ月の比較。

Clin Oral Implants Res. 2008 Apr;19(4)

In-patient comparison of immediate and conventional laded implants in mandibular molar sites within I2 months
M.Baris Guncu
Yavuz Aslan
Celal Tumer
Guliz N.Guncu
Serdar Uysal

本研究においては、下顎臼歯部インプラント即時荷重はなんら安定性に問題を起こさなかった。また辺縁骨レベルやインプラント周囲組織の健康も通法と比較して遜色はなかった。
伊藤

インプラント周囲に骨欠損が発生した場合の、オッセオインテグレーションに対する移植剤の効果。

Clin Oral Implants Res. 2008 Apr;19(4)

Effect of grafting materials on osseointegration of dental implants surrounded by circumferential bone defects
An experimental study in the dog
Faleh Abushahba
Stefan Renvert
Ioannis Polyzois
Noel Claffey

インプラントと周囲骨の間にgapが発生した場合、そこに自家骨を移植した場合とバイオオスを移植した場合は、血餅を移植した場合に比べて、有意に広い範囲のossointegrationを獲得した。
伊藤

人骨誘導再生法における架橋重合型コラーゲンメンブランと非架橋重合型コラーゲンメンブランの吸収過程の長期観察

Long-term bio-degradation of crosslinked and non-cross-linked collagen barriers in human guided bone regeneration
Haim Tal
Avital Kozlovsky
Zvi Artzi
Carlos E.Nemcovsky
Ofer Moses

架橋重合型コラーゲンメンブラン(Ossix)は非架橋重合型コラーゲンメンブラン(Bioguide)に比べて、吸収に対して抵抗性であったと同時に組織と長期に接合した。さらに口腔環境に露出した場合であってもよく吸収に抵抗した。しかし架橋重合型コラーゲンメンブランは組織の裂開とも高い相関があった。裂開しなかった症例では、架橋重合型コラーゲンメンブランの部位もしくはその内部に時に骨化を認めた。
伊藤

近遠心的インプラント傾斜に関する手術的要因

Clin Oral Implants Res. 2008 Apr;19(3)

Surgical factors influencing mesiodistal implant angulation
Michael Payer
Robert Kirmeier
Norbert Jakse
Christof Pertl
Walther Wegscheider
Martin Lorenzoni

フィクスチャーの近遠心的傾斜に関しては、手術的要因が強く関与するが、経験のある外科医ではこのような変移は少なかった。バーのサイズを飛ばしてドリリングした場合は偏移の危険率が高まった。ドリルスピードが速いと偏移の危険率が高まった。
伊藤

骨誘導タンパク−2はハイドロキシアパタイトと3燐酸カルシウムを含む合成マトリックスを担体として移植すると、骨形成を促進する。

Clin Oral Implants Res. 2008 Apr;19(2)

Bone morphogenetic protein-2 enhances bone formation when delivered by a synthetic matrix containing hydroxyapatite/tricalciumphoshate
Ronald E.Jung
Franz E.Weber
Danniel S.Thoma
Martin Ehrbar
David L.Cochran
Chistoph H.F.Hammerle

ポリエチレングリコールゲルを担体とした骨誘導タンパクー2をハイドロキシアパタイトと燐酸カルシウムの代用骨と同時に移植すると、ハイドロキシアパタイト、燐酸カルシウムのみの場合の2倍の速度で骨形成を促進した。
伊藤

バイオフィルムに汚染されたインプラント粗面の再Osseointegrartion—犬をもちいた実験的研究—

Clin Oral Implants Res. 2008 Apr;19(2)

Re-osseointegration on rough implant surfaces previously coated with bacterial biofilm:an experimental study in the dog
Mohamed Alhag
Stefan Renvert
Ioannis Polyzois
Noel Claffey

インプラントを骨から突出させて植立し、3ヶ月でプラークが粗面を覆うのを待った。その後、1.酢酸で30秒間ブラッシングでプラークを除去し、生理食塩水で洗い流した。2.生理食塩水と歯ブラシで1分間清掃した。3.10%過酸化水素でブラッシングしプラークを除去した後、生理食塩水で洗い流した。これらのインプラントを正規の深度まで再植立したところいずれも骨結合した。
伊藤

インプラント頬側の骨治癒動態

Clin Oral Implants Res. 2008 Apr;19(2)

Bone healing dynamics at buccal peri-implant sites
Mohammed Qahash
Cristiano Susin
Giuseppe Polimeni
Jan Hall
Ulf M.E.Wikesjo

抜歯即時埋入は、歯槽突起を保存するであろうと広く信じられている。本研究の目的は、インプラント頬側の骨治癒動態を評価することである。結論は抜歯窩にインプラントを植立する場合、頬側残存骨の幅が2mm以上の場合、歯槽骨辺縁レベルは温存される。
伊藤 正夫 先生 訳

Buccal Fat Pad Graft

Moraes E.J.: Closure of oroantral communication with buccal fat flap in zygomatic implant surgery. A case report

本科学論文は、上顎骨欠損に関連した骨移植片の被覆のため、あるいは口腔上顎洞漏孔閉鎖のために頬脂肪体移植による手法を解説した。有頚頬脂肪体弁移植は口腔上顎洞漏孔閉鎖術において、受容側に即時的な血液供給を行うので推奨される方法である。著者は口腔顔面外科手術に基づく口腔上顎洞漏孔の閉鎖に頬骨インプラントと有頚頬脂肪体移植術を併用した方法を紹介した。
伊藤 正夫 先生訳

解説:頬脂肪体は頬筋内面にあって、咬筋前縁から下顎枝側方から頬骨弓にかけて広がっている。薄い皮膜で覆われ、破るとずるずるいつまでも出てくる。血行が豊富で、血行不良の潰瘍などに大網膜が持ちいられるのと同じ原理で、口腔内の欠損などを良く治療することができる。わたしも口腔上顎洞漏孔の閉鎖に用いたことがあるが、漏孔の直径が5mm異常の場合は本法がよいと著者は述べている。口腔外科では頬側弁は人気がなく、大口蓋動脈を栄養血管とするペディクルフラップが第一選択であった。

抜歯即時インプラントに継発した難治性骨髄炎

Kesting M.R., Thrmuller P.,et al: Severe osteomyelitis following immediate placement of dental implant. Int J Oral Maxillofac Implants 23:137-142, 2008

抜歯即時インプラントのリスクファクターについては広く議論されている。本報告では61歳女性の抜歯窩に即時にインプラント植立を行った後、深刻な合併症である骨髄炎を継発した症例を供覧した。初期治療は再発性の下顎骨周囲膿瘍に対して、外科的ドレナージや高濃度抗生剤の点滴静注を繰り返したが、寛解しなかった。下顎骨半側切除を行い脛骨の血管丙付骨移植によって下顎の部分的再建を行った。
伊藤抄

解説:抜歯即時埋入に伴なう感染症はエンド関連よりぺリオに注意すべきである。日和見感染はエンドよりぺリオに圧倒的に多く見られる。骨髄炎は恐い病気で慢性化すると根治は困難である。昨年、わたしの症例でサイナスリフト部の激痛を訴える患者(同部のインプラントの骨植堅固)は、サイナスリフトに起因する上顎洞炎が否定できたので、骨髄炎を疑い、インプラント、新生骨を切除し寛解したが、いまだに拇指頭大の口腔上顎洞漏孔が残遺している。代用骨などを使って新生させた骨も生活活性が乏しく、感染すると骨髄炎を継発する確立が高いであろう。下顎においては合併症が起きると深刻になりがちな解剖学的特性を持っているので、複雑なケースでは単純化してから行うことを原則としよう。 
伊藤

 

下歯槽管側方移動骨折

una Anibal H.B., Psseri Luis A., et al:Endosseous implant placement in conjunction with inferior alveolar nerve transposition: A seport of an unusual complication and surgical management. Int J Oral Maxillofac Implants 23:133-136, 2008

下歯槽神経移動術を行ってインプラントを植立する方法は、下顎臼歯部において下歯槽管上に十分な高さの歯槽骨がない場合のとりうる方法のひとつである。本法に伴なって起こりうる合併症は長期間の知覚神経異常、感染、病的骨折があげられる。本報告では下歯槽管移動術に伴なって3本のインプラントを植立後、下顎骨骨折を起こした症例を報告した。
伊藤抄

解説:下歯槽神経血管側側方移動術に伴なって下顎骨骨折を起こすという合併症はまれなものでなく、わたしも経験しているし、多くの報告がすでにある。Daniel Laskinは2回法で行った場合の下顎病的骨折に関しては、骨折線上のインプラントも抜去せず保存的整復固定を推奨している。本報告ではプレート固定を行い骨折線上のインプラントは抜去している。わたしも同様の治療を行ったが、本法では舌側皮質骨しか骨格が当初保存されないので、義歯を乗せると高率に起こりうる合併症と考える。 
伊藤

仮骨延長法骨内固定

Pektas Z.O.,Kircelli B.H.,et al: Alveolar cleft closure by distraction osteogenesis with skeletal anchorage suring consolidation. Int J Oral Maxillofac Implants 23:147-152, 2008

口内法による仮骨延長法は、さまざまな歯槽骨欠損の再建に広く用いられている。しかしこれを顎裂に用いる試みは比較的最近のことである。本法は歯槽骨を分割しこれを延長することによって裂に歯槽骨を新生させ、同時に付着歯肉も再生させる方法である。本法の利点は骨採取の必要が無く、骨移植の失敗の可能性を排除することが出来ることである。しかし、比較的長期間にわたる延長器による固定は軟組織を刺激し、それは患者特に子供では治療に対する協力性を失わせかねない。
伊藤抄

咬合

Tawii G.:Peri-implant bone loss caused by occlusal overload: Repair of the peri-implant defect following correction of the traumatic occlusion. A case report. Int J Oral Maxillofac Implants 23:153-157,2008

本症例報告の目的は、咬合による過剰負荷とインプラント周囲骨喪失の関係を示し、このような攻撃力の排除によって、状況を改善させうることを示説することである。9年間安定した状態を示した3本のよく骨結合したインプラントに、不安定な可徹性保綴物を装着することによって、装着6ヵ月後にはすでに明らかな骨吸収を認めた。外傷性咬合の除去は状況を改善させ、インプラント周囲組織は外傷前に近い状態に回復した。この状態で4年間安定している。
伊藤抄

解説:晩期喪失の大半は、インプラントに斜力が加わることによって発生する。定期的な咬合調整と1年に1度程度のレントゲン診査は必須と考える。 
伊藤

2008/4/15 更新

上顎前歯部抜歯窩でのインプラントポジションを根先口蓋側の誘導溝を用いる手法の考案

Ideal Implant Positioning in an Anterior Maxillary Extraction Socket by Creating an Apico-palatal Guiding Slot: A Technical Note
Kyung-Gyun Hwang,DDS,MSD,PhD/Chang-Joo Park,DDS,MSD,PhD

上顎前歯部抜歯窩でのインプラントポジションを根先口蓋側の誘導溝を用いる手法の考案
上顎前歯部抜歯窩へのインプラント即時埋入は通常口蓋壁に沿って植立されるが、インプラント挿入時の不注意な唇側へのスリップによって、薄い唇側板を骨折させたり穿孔する頻度が高い。これを防止するために、非侵襲的抜歯に引き続き、根先口蓋側に誘導溝を形成する方法を考案した。この溝の形成に引き続きドリリングをシークエンシャルに行い、簡単に離動的な軸位にインプラントを位置づけることが出来る。
解説:ラウンドバーにて根先から口蓋側を一定の範囲で平坦に削って根先部にテーブルを作り、その口蓋側にドリリングしていく手法のようである。
伊藤抄

自家皮質骨砕片

GBR and Autogenous Cortical Bone Particulate by Bone Scraper for Alveolar Ridge Augmentation:A 2-Case Report
Leonardo Trombelli,DDS/Roberto Farina,DDS,PhD/Andrea Marzola,MD/Angelo Itro,MD/Giorgio Calura,MD,DDS

歯槽骨再建手法に用いられる移植材のうちでも自家骨がゴールデンスタンダードだということは多くの科学論文で述べられている事実である。歯槽突起の増大は自家皮質骨砕片を含む異なる自家骨移植法で達成されるが、その生物学的活性や治癒動態についての組織学的研究は少ない。チタン強化ゴアテックス膜と臼後結節部からスクレーパーで採取した自家皮質骨砕片によるGBRを行い、9ヵ月後に標本を採取した。分析の結果再建された骨は成熟した骨構造を持った層板骨であった。散在する移植骨の粒子は再生骨と直接接触していた。骨髄組織は正常な間質系組織でごくわずかな移植片を認めた。
解説:バイオオスや最近では遺伝子組み換えPDGFやBMP2などが脚光を浴びているが、基本的に自家骨に勝る移植材は現在のところない。これは骨伝導能、骨誘導能、骨再生能をかね持つ唯一の物質である。
伊藤抄

子牛ミネラルブロック

A Bovine-Bone Mineral Block for the Treatment of Severe Ridge Deficiencies in the Anterior Region:A Clinical Case Report
Marius Steigmann,DDS

子牛ミネラルブロック(バイオオス海面骨ブロック)を水平性、垂直性の高度骨吸収症例に応用した。ブロックをは完全に欠損に適合するよう形成でき、これは自家骨採取やスクリューによる固定を不要にする。6ヶ月の結合期間を経た後インプラントを植立し、さらに6ヶ月待機し、上部構造を装着した。3年経過観察した。その結果ブロックと周囲骨の間で緩やかな骨吸収が発生したが、軟組織支持や審美性に影響を与える隣接骨頂は維持された。本法は有用であろう。
解説:最近バイオオスブロックをBMP2のキャリアーにして移植する手法がアメリカを中心に臨床応用され始めている。コストの問題、十分なフェーズ試験が必要であろう。
伊藤抄

オステオトームテクニックによる良性突発性めまい

Benign Paroxysmal Vertigo Secondary to Placement of Maxillary Implants Using the Alveolar Expansion Technique with Osteotomes:A Study of 4Cases
Miguel Penarrocha-Diago,MD,PhD,MS/Javier Rambia-Ferrer,DDS,MDS/Vanesa Perez,MD/Herminio Perez-Garrigues,MD,PhD

オステオトームテクニックによる歯槽堤拡大術を用いたインプラント植立後の良性突発性めまいの4例
オステオトームテクニックは上顎の歯槽突起萎縮症例ではしばしば用いられる手法であり、非常に有用でもある。しかし本法に起因した良性突発性空間失調性めまいについて報告した。オステオトームテクニック時のマレットによるトラウマが頚部の過伸展と強調して耳石の位置以上をきたしめまいを継発する。こ根治的治療法は半規管内で位置異常を起こしているカルボン酸カルシウムの結晶を卵形嚢に戻してやるようにマニピュレーションすることであり、これは神経耳科医の仕事である。予防は特に年配の患者において過剰なマレッティングを避け、ドリルと併用することによって外傷を最小化することと頚部の過伸展を避けることである。
伊藤抄

Positive effect of early loading on implant stability in the bi-cortical guinea-pig model

歯科においてインプラント埋入後の早期荷重に多くの関心が寄せられている。共振周波数装置によって測定されるインプラントの初期固定の度合いは、いつ即時及び早期荷重を行なうべきかの予知因子として特定されている。共振周波数分析(RFA)によって早期(7日後)の力学的荷重が骨性結合の確立に及ぼす影響を調べた。モルモット10匹の両側脛骨に、チタン・インプラントを経皮的に植立した。インプラント埋入後1週間後にインプラント1本(試験)に毎日6週間荷重し、もう1本は非荷重(対照)とした。正弦波状に変化する曲げモーメントを、周波数3Hz、力の大きさ5N1800サイクルにて負荷した。共振周波数をインプラント植立時と、その後1週間ごとにOsstellを用いて測定した。対照のインプラントは、植立後1週間後に安定性が減少し3週間後に最低値(−200Hz)となったが、試験インプラントは経時的に安定性が増加した。6週間後に試験及び対照インプラントの平均共振周波数は同じ値になった。最近の文献で確認されているように、早期荷重はチタン・インプラントの骨性インプラントの達成にとって危険ではない。

他方荷重の制御は、極めて重要な意味を持つ治癒期間の早期にRFAによって測定されるインプラントの安定性を維持するのに有効である。

Offcial Publication of the EAO

Histologic and histomorphometricanalysis of three types of dental implants following 18 months ofocclusal loading: a preliminary study in baboons

異なるデザインと表面性状を有する歯科インプラントについて、機能的荷重後に骨面積(BA)と骨ーインプラントの接触(BIC)の比率を測定した。ヒヒの下顎臼歯部に3つのタイプ歯科インプラント(商用純チタン製スクリュー型CpTi:グリップブラスト・酸エッチングを施したスクリュー型GBAE:チタンプラズマ溶射のシリンダー型)を埋入し、固定式部分義歯を装着した。片顎ごとに同じゼザインの3本を入れた。機能的荷重後18ヶ月後に全てのインプラントは顎骨と結合しており、組織形態測定分析を行なった。組織学的には、インプラント表面とインプラント周囲の骨の間に結合組織の介在なしに直接のBICが認められた。インプラント周囲1mm以内のBAの分析によって、上顎においてCpTi(50.5%)とTPS(39.7%)の間に有意差が認められた。全体としての所見は、絶対BIC値は上顎ではスクリュー型インプラントの方がシリンダー型よりも高く、18ヶ月の機能的荷重後に絶対BIC値は下顎より上顎の方が低いことを示した。

By the EAO

セメント固定式インプラント上部補綴の、7セメントの維持効果および辺縁漏洩

Comparison of 7 Luting Protocols and Their Effect on the Retention and Marginal Leakage of a Cement-Retained Dental Implant Restoration

目的:アバットメントにセメント合着した鋳造物の強度と辺縁漏洩を判定することが目的である。
材料および方法:56のチタン製アバットメントと鋳造物を準備し7群に分けて、8検体を1つの材料に対応させた。材料はレジン系3種(RES,RES-B,RES-B-P),
レジン強化グラスアイオノマート(GI)、ポリカルボン酸(PCB)、アクリルウレタン(UDM)、燐酸亜鉛(ZP)である。検体は37℃湿度100%中に24時間置いた。その後加圧実験系と加温実験系に入れた。その後24時間0.5%フクシンに浸漬した。規格化された装置により鋳造物を除去し、セメントの破断力と漏洩を評価した。
結論:メーカーが暫間用と指定したセメントはもちろん永久用と指定したセメントに比べて維持力が弱く、維持力はレジンが最も強く、ついで燐酸亜鉛、ポリカルボン酸の順であった。暫間用セメントは高強度のものに比べて、漏洩を認めた。 伊藤正夫先生訳

インプラント植立に伴う垂直性GBR:2種類のテクニックの有効性

Vertical Bone Augmentation with Dental Implant Placement:Efficacy and Complications Associated with 2 Different Techniques. A Restrospective Cohort Study

自家骨を用いた垂直性GBRをインプラント植立と同時に行なった。一種はチタン強化型ゴアテックスメンブレン、もう一種は骨接合プレートで顎堤を付形し、吸収性メンブレンで被覆した。両群とも良好な骨新生を認め、差はなかった。伊藤正夫先生訳

オトガイ棘上孔のマクロ解剖及びエックス線学的特徴

Macroanatomic and Radiologic Characteristics of the Superior Genial Spinal Foramen and Its Bony Canal

オトガイ棘上孔のマクロ解剖及びエックス線学的特徴
目的:オトガイ棘上孔の大きさ、位置、管の構造を知ることを目的とする。
材料および方法:380の屍体の下顎を対象に、オトガイ棘上孔の下顎基部からの距離、大きさを検討した。エックス線学的に本管の下顎切歯管との関係も検討した。
結果:98%に本孔を認めた。形状は円形もしくは扁平なじょうご型をしていた。舌動脈および舌神経の終枝が走行した。
結論:下顎正中におけるインプラント植立は神経血管系の損傷を起こす危険性がある。

サイナスオーギュメンテーションにおける多孔性合成ハイドロキシアパタイトと子牛由来ハイドロキシアパタイトの比較

axillary Sinus Augmentationn with a Porous Synthetic Hydroxyapatite and Bovine-Derived Hydroxyapatite:A Comparative Clinical and Histologic Study

サイナスオーギュメンテーションにおける多孔性合成ハイドロキシアパタイトと子牛由来ハイドロキシアパタイトの比較
目的:合成HAとバイオオスの比較を行なう。
材料及び方法:上顎洞骨造成が必要な患者に100本のチタンインプラントを植立し、半数には多孔性合成HAを、残りにはバイオオスを移植し、6ヶ月後に骨を採取し検討した。
結果:双方の群とも2本づつのインプラントが脱落した。すべての患者は1年の経過観察を行ない、双方とも新生骨で取り巻かれていた。
結論:多孔性合成HAとバイオオスには差がない。

3D人凍結乾燥骨移植

Simplified Onlay Grafting with a 2-dimensional Block Technique:A Technical Note

ブロックボーングラフトでは移植骨と母床が密着しないと、生着しない。そこで人凍結乾燥骨を、3DCTによって患者顎骨の3次元モデルを作成し、それに合わせて加工し、移植する方法を論述している。
解説:合衆国では人凍結乾燥骨が骨バンクより供給され、臨床に用いられている。自家骨とのトライアルは未だ定かでないとともに、感染症の危険性を完全には排除できない。

セメント合着後の鋳造補綴インプラント上部構造の皮膜厚さと維持力

Retention Forces and Seating Discrepancies of Implant-Retained Castings After Cementation

セメント合着後の鋳造補綴インプラント上部構造の皮膜厚さと維持力:
目的:材料の種類によってあるいは使用法によって、浮き上がりや維持力に差が出ないかを検討することである。 
材料および方法:ユージノールフリーの酸化亜鉛、燐酸亜鉛、グラスアイオノマー、ポリカルボン酸、レジンを用いた。鋳造物の内面を完全に覆う方法と半分だけ覆う方法を検討した。アバットメントは鏡面研磨のものと表面をエアーアブレージョンしたものの2種を検討した。
結果:いずれの方法でもマージンのセメント厚さは変わらず、ポリカルボン酸が最大の維持力を示したが、酸化亜鉛と燐酸亜鉛/グラスアイオノマ群とポリカルボン酸/レジン群の間には統計学的有意差を認めた。
全面コーティングであっても、半分のコーティングであってもいずれにおいても差は認めなかった。エアーアブレージョンはいくつかのものでは維持力向上に有効であった。
結論:いずれのセメントにおいても鋳造物の内面の半分をコーティングする方法は、全面コーティングと維持力の差を認めなかった。

ハイドロキシアパタイトコーティングインプラントの長期成績(080228)

Long-Term Follow-up of Hydoroxyapatite-Coated Dental Implants – A Clinical Trial

セメント合着後の鋳造補綴インプラント上部構造の皮膜厚さと維持力:
目的:セメントの種類によってあるいはセメントの使用法によって、浮き上がりや維持力に差が出ないかを検討することである。
材料および方法:ユージノールフリーの酸化亜鉛セメント、燐酸亜鉛セメント、グラスアイオノマー、ポリカルボン酸セメント、レジンセメントを用いた。鋳造物の内面を完全にセメントで覆う方法と半分だけ覆う方法を検討した。アバットメントは鏡面研磨のものと表面をエアーアブレージョンしたものの2種を検討した。
結果:いずれの方法でもマージンのセメント厚さは変わらず、ポリカルボン酸が最大の維持力を示したが、酸化亜鉛と燐酸亜鉛/グラスアイオノマ群とポリカルボン酸/レジンセメント群の間には統計学的有意差を認めた。
全面コーティングであっても、半分のコーティングであってもいずれのセメントにおいても差は認めなかった。エアーアブレージョンはいくつかのセメントでは維持力向上に有効であった。
結論:いずれのセメントにおいても鋳造物の内面の半分をセメントでコーティングする方法は、全面コーティングと維持力の差を認めなかった。エアーアブレージョンはセメントによっては維持力を向上させた。伊藤正夫先生訳

Alloxan誘導性糖尿病家兎の頭蓋形成術に対する均質脱灰象牙質器質の応用:組織計測学的評価

Homogenous Demineralized Dentin Matrix for Application in Cranioplasty of Rabbits with Alloxan-Induced Diabetes:Histomorphometric Analysis

目的:アロキサン誘導性糖尿病家兎の頭頂骨に欠損を作成し、均質脱灰象牙質器質(HDDM)の移植がいかに骨修復過程に関与するかを評価することにある。材料および方法:48頭の兎を4群に分けた。対照群、何も移植しない糖尿病うさぎ(D)、ゴアテックス膜で被覆した糖尿病うさぎ(D-PTFE)、HDDMを移植しゴアテックスで被覆した糖尿病うさぎ(D-PTFE+HDDM)である。糖尿病はアロキサンの1回の静脈注射で誘導した。家兎は術後15,30,60,90日で屠殺した。結果:再生骨構造の質、量ともにD-PTFE+HDDM群が他群を上回り(P<0.01)、骨密度は15~90日で増加した。結論:たとえ糖尿病の患者に対してであっても、HDDMは骨形成を活性化する効果がある。

解説:近年GBRに様々なサイトカインやこのような未精製の様々な物質が用いられ、骨誘導を分子生物学的に行おうとする潮流がある。研究はいずれも観察期間が短く、サンプルサイズも小さい。したがってもっとも重要な骨組織の分化に関しての情報が少ない。サイナスリフトなど周囲骨が少ない環境でのGBR(サイナスリフトもGBRである)の長期予後にに関しては、未だ判然としない。組織再生は、細胞移動、細胞分裂、組織分化の過程を経て完了するが、分化が十分でないとインプラントを支えるのに十分な構造体ができたとはいえない。サイナスリフト後の晩期脱落については、咬合などの外傷要因はさることながら、骨改造機転が十分進行しないのではないかと推測している。

抜歯即時埋入即時荷重

SImmediate Occlusal Loading of Implants Placed in Fresh Sockets After Tooth Extraction

目的:本研究の目的は、抜歯即時埋入即時荷重18ヶ月後の臨床およびエックス線学的成果を評価することである。材料および方法:27名の患者内女性15名、男性12名に対して、160本のインプラントを植立した。150本は抜歯即時埋入を行い、いずれの抜歯窩の壁も完全に保存されていた。残り10本は治癒した部位へ植立した。手術後すぐにすべての患者は、アバットメント上に暫間補綴をセメントで固定し、口内法によるデジタルエックス線写真を術後3ヶ月と18ヶ月で撮影した。結果:歯肉のわずかな腫脹以外の合併症は認めなかった。1年18ヶ月後の辺縁骨の喪失は平均で、上顎近心0.65±0.58mm、上顎遠心0.84±0.69mmで、下顎近心1.13±0.51mm、下顎遠心1.24±0.60mmであった。連結と単独では差はなかった。結論:本臨床研究の範囲内では、抜歯即時埋入即時荷重は成功しうる治療法である。

解説:成功の要点は、初期固定30Ncm以上、完全でなくとも4壁性骨欠損で、もっとも薄い骨壁の厚みが2mm以上であること。辺縁骨とインプラントのギャップが2mm以内であること。もっとも薄い骨壁上の粘膜を剥離しないこと。中心咬合位のみで接触させること。暫間補綴でなく永久補綴の場合は術後2週間以内にセットするなどがあげられる。伊藤正夫先生訳

抜歯即時埋入において、プラットフォームスイッチを用いた時のインプラント周囲軟組織、硬組織の保存:
12から36ヶ月の観察期間に基づくプラットフォームスイッチの概念証明研究:

Preservation of Peri-implant Soft and Hard Tissues Using Platform Switching of Implants Placed in Immediate Extraction Sockets:A Proof-of-Concept Study with 12-to 36-month Follow-up

プラットフォームスイッチとは、アバットメント、フィクスチャー連結が平面対平面で接合するタイプのインプラントシステムにおいて、普通より細いアバットメントを接合することを言う。上顎の骨吸収のない10の新鮮抜歯窩を用いた。抜歯即時に6mm径のフィクスチャーを植立し、4mm径のアバットメントを接合した後、プロビジョナルクラウンをセットし、咬合させないようにし、3ヵ月後に永久補綴を施行した。永久補綴施行後6ヵ月ごとにエックス線学的、ポケットプロービング値、歯肉退縮や歯冠乳頭の高さを計測した。近遠心の歯槽骨縁の骨の高さも計測した。
その結果、9名の患者に対して10箇所の治療を行なった。平均22ヶ月経過観察した。すべての10本のインプラントは骨結合を確立し、平均骨喪失量は0.78±0.36mmで、文献上の平均値1.7mmを統計学的に有意に下回った。プロービング値は3mmを超えるものは無く、退縮も無くむしろ頬側歯肉は0.2mm獲得し、歯冠乳頭は0.25mm獲得した。
結論:プラットフォームスイッチを用いた抜歯即時埋入、即時荷重はインプラント周囲の硬組織、軟組織、および歯冠乳頭を保存しうる方法であると結論した。伊藤正夫先生訳

成人骨髄由来のヒト間葉系前駆細胞の分化が与 える骨—インプラント間での初期骨合成に与える関係

Schweiz Monatsschr Zahnmed. 2007;117(9):906-10.

インプラントの表面性状が骨結合に大きな影響を与えることは臨床経験上理解で きる。これらのことは未分化細胞や骨髄細胞由来の骨原性のマーカーと関係があ ることが分かっている。筆者らは成人骨髄由来のヒト間葉系前駆細胞の分化が与 える骨—インプラント間での初期骨合成に与える関係などの影響について検討し ている。機械研磨のチタンと酸処理のチタンとの間で検討している。結果として は7日間から14日間の間では細胞密度に変化がなかった。細胞数に関しては酸処 理したチタンの方が多く表面積に比例していることが考えられた。アルカリフォ スファターゼ(ALP)は基質では変化がなかったが、骨シアロタンパク質は14日 以後において酸処理群において10倍mRNAの発現量が多く認められた。酸表面処理 群は前駆細胞内のBSP上昇は細胞分化が早いことにより説明できる。したがっ て、臨床的にも早期のインテグレーションや、より早い荷重が行えることになろ う。チタン表面性状と骨結合の関係はすでに酸処理が良好な結果を招くことは、 多くの報告からも分かることであるが、今後は更なる処理を加えることが、より 良い結果を招くかを議論して行くことになるだろう

インプラントブリッジにおける支台となるインプラントの傾斜が辺縁骨 に及ぼす影響 5年後の評価

Clin Oral Implants Res. 2007 Oct;18(5):585-90. Epub 2007 Jun 30.

本研究はインプラントブリッジにおける支台となるインプラントの傾斜が辺縁骨 に及ぼす影響について検討している。38名42か所を評価した。5年経過で観察し たところ、傾斜したインプラントと歯軸位で植立したインプラント間のブリッジ の骨吸収には有意差を認めなかった。植立状態が良ければ、たとえ傾斜していよ うが予知性の高いインプラント治療が可能であることが結果として出てはいる が、上部構造の咬合関係の付与が大きく予後を左右することも忘れてはならな い。高野先生訳

チタン表面処理が血漿タンパクの吸着に及ぼす影響

Clin Oral Implants Res. 2007 Oct;18(5):630-8. Epub 2007 Apr 30.

インプラント表面のチタン処理とインテグレーションの初期段階で必要な血漿タ ンパクの吸着に及ぼす影響について検討している。機械研磨、酸エッチング、酸 エッチングとブラスト処理の併用の3郡で比較検討している。酸エッチングと機 械研磨の表面より、酸エッチングとブラスト処理したチタン表面の方が、粗さの 値が高く、酸化チタン層の厚みが大きかった。さらに、酸エッチングとブラスト 処理の表面は高い表面積の分化を示していた。そして酸エッチングと機械研磨の 表面より、酸エッチングとブラスト処理したチタン表面の方が血漿タンパクの吸 着量、密度ともに高かった。以上より酸エッチングとブラスト処理したチタン表 面がより多く、かつ早く骨結合を行うと示唆された。近年、様々な表面処理を 行ったフィクスチャーが販売されているが、そろそろ技術的に落ち着くところに 来たのではないだろうか。高野先生訳

即時埋入したインプラントにおける臨床的・審美的検討

Clin Oral Implants Res. 2007 Oct;18(5):552-62. Epub 2007 Jun 30.

無機牛骨を移植して即時埋入した粘膜貫通型インプラントにおける周辺骨欠損の 治癒を評価して、3~4年間の経過観察を行っている。30名の上顎前歯部に30本の インプラントを埋入してBioOss、BioOssと吸収性メンブレン、移植無しの3郡で 比較検討した。垂直的骨吸収は各郡で有意差は認めなかったが、水平的骨吸収は 移植無しの群が有意に高かった。特に唇側の粘膜退縮が有意に変化を認めた。結 論としてはBioOssは水平的骨吸収を有意に減少させた。また、筆者らは抜歯窩に 対して舌側に埋入して、適当な径のフィクスチャーを入れショルダーを2mm程度 に納めることによって予知性の高い埋入ができると結論付けている。

インプラント周囲炎サイトカイン

Int J Periodontics Restorative Dent. 2006 Apr;26(2):135-41.

脱落しつつあるインプラント周囲組織では、破骨細胞を制御するサイトカインが活性化している可能性がある。そこで脱落しつつあるインプラント周囲組織あるいは歯肉を採取し、検体に供するともに、慢性歯周炎と健全な歯肉を採取し免疫組織化学的に比較検討した。検討したサイトカインはα腫瘍壊死因子(TNF-alpha)、アルファ1インターロイキン(IL-1alpha)、IL-6、血小板由来成長因子A、変異成長因子アルファ(TGF-alpha)である。これらのサイトカインは異物巨細胞、大食細胞、線維芽細胞や上皮細胞に認められる。インプラント周囲炎や慢性歯周炎ではTNF-alpha,IL-1alpha,IL-6が有意に上昇していた。一方でPDGF-AとTGF-alphaは上昇しなかった。結論として、破骨細胞を活性化するサイトカインはインプラント周囲炎でも慢性歯周炎でも認められた。しかしプロファイルが異なり、インプラント周囲炎ではIL-1alphaがもっとも強い影響を持ち、慢性歯周炎ではTNF-alphaがもっとも一般的であった。これらのサイトカインが破骨細胞の活性化をもたらしインプラント周囲骨の喪失とインプラントの脱落を招くものと考えるので、サイトカイン刺激物質をターゲットとした局所治療の開発が有効であろう。伊藤正夫先生訳

PDGFによるGBR

Int J Periodontics Restorative Dent. 2006 Oct;26(5):415-23.

本研究の第1の目的は、犬を用いた規格モデルにおいて、精製された人遺伝子組み換え血小板由来成長因子(rhPDGF-BB)と脱タンパク子牛海綿骨のブロックを用いた垂直性骨造成の成果を評価することである。第2の目的は吸収性バリアーメンブランが本法の成果を改善するかどうか検索することである。

 フォックスハウンド成犬6頭を実験に供し、両側すべての下顎小臼歯を抜歯した。抜歯時に垂直性骨欠損を形成した。3ヵ月後に人工的に作った骨欠損に対して、移植を行なった。A群は脱タンパク子牛海綿骨ブロックとコラーゲンバリアーメンブレンを併用した。

B群は脱タンパク子牛海綿骨ブロックにrhPDGF-BBを注入したものを用いた。C群はB群と同じ処置に吸収性コラーゲンバリアーメンブランを用いた。4ヵ月後に動物を屠殺した。組織学的所見では、B群において大量の新生骨を認め、骨インプラント接合面積も高く、新生骨はカバースクリューの上まで形成されていた。この犬を用いた臨床前研究成果はrhPDGF-BBを脱タンパク子牛海綿骨ブロックと併用し、かつバリアーメンブランを使用しない方法の優位性を示しおり、下顎高度顎堤吸収症例において十分な骨新生を提供しうる可能性を示した。加えるに、成長因子が介在する骨再生療法においては骨膜由来の前骨芽細胞の重要性がポイントであると示唆された。

解説:現在、北米、欧州ではBMP2やPDGFをキャリアーとしてバイオオスを使用した商品が販売されている。これらのサイトカインは生体内で異所性に骨を誘導することが解明されている。これらを用いたGBRはOsteoprogeniter cellsを活性化することから仮骨機転が開始するので、骨膜を遮断するバリアーメンブランは不要とする考え方である。一方で従来のGBRは、骨欠損を周囲から隔離することで、骨由来の細胞のみが隔離環境を占めるという考え方である。したがってバリアーメンブランが不可欠であった。つまるところ現況ではGBRの理論的根拠はいまだ脆弱である。本論がGBRの開発者によって著されたことも付記したい。伊藤正夫先生訳

腸骨移植

J Oral Maxillofac Surg. 2007 Oct;65(10):2039-46.

極度に萎縮した上顎に対する、前腸骨稜からの骨移植の成否、およびそこに植立したインプラントの臨床成績を評価することが本研究の目的である。56名の成人に対してオンレイボーングラフトを行い、4,5ヵ月後にインプラントを植立した。

129のグラフトが行なわれたが、垂直性造成を試みた3例は早期露出のため撤去せざるを得なかった。162本のインプラントが植率されたが、7本は脱落した。インプラント周囲の骨喪失は平均0.05mm+/−0.2mmであった。前腸骨稜からの骨移植は上顎高度吸収顎堤には信頼できる手法であると結論した。

垂直性GBR

Clin Oral Implants Res. 2007 Oct;18(5):620-9.

目的:人において垂直性骨造成を行なう際に、脱タンパク子牛ミネラルと自家骨を1:1に混和しe-PTFE膜と併用した場合の効果性について、組織学的、組織形態学的検討を行なった。

材料および方法:下顎の部分欠損症例7名の患者に対して10箇所の垂直性骨造成を前記のレシピを用いて行なった。27本のBranemark implantを植立した。骨造成した領域から11検体を生険し、組織学的および組織形態学的に解析した。

結果:治癒期間になんら問題なかったが、1部位のみ3ヶ月語に膜が露出した。アバットメント連結時にはいずれのインプラントも安定しており、硬い再生組織、臨床的には骨内に存在していた。組織学的には新生骨の生成と進行中の骨改造機転と脱タンパク子牛ミネラルを認めた。

結論:垂直性GBRにおいて、1:1比率に混和した自家骨と脱タンパク子牛ミネラルにチタン強化e-PTFE膜の組み合わせは有効であると判定した。伊藤正夫先生訳

BMP歯周治療

J Periodontal Res. 2005 Aug;40(4):299-305

目的:骨誘導タンパク(BMP)を使用した歯周再生法の合併症は、骨性癒着である。BMP応用後の骨性癒着の消失は小さな骨欠損の場合に観察されており、それは歯周組織再生に有利であろう。しかし大きな骨欠損ではこのような骨性癒着の消失は観察されていない。

本研究の目的は、Class3分岐部病変への人遺伝子組み換えBMP-2(rhBMP-2)応用による歯周再生法中の骨性癒着の解消法を確定することにある。

材料および方法:6頭の成猫の小臼歯にClass3分岐部骨欠損を作成した。RhBMP-2移植剤はrhBMP-2をポリ乳酸ポリグリコール酸共重合体とゼラチンスポンジを担体とし、対照群には担体のみを使用した。そしてこれらを骨欠損部に移植した。猫は術後3週、6週、12週で屠殺し、組織学的、組織計測学的検討に供するため連続切片を作成した。

結果:骨性癒着はrhBMP-2担体群の数検体に3週と6週で認めたが、12週では認めなかった。骨性癒着を起こしたrhBMP-2担体群の6週で破骨細胞様細胞を認めた。骨性癒着を生じなかったrhBMP-2担体群の3週では骨と歯根表面の間に担体の介在が明らかであった。

結論:rhBMP-2使用による骨性癒着の解消には破骨細胞様細胞の関与が示唆された。骨性癒着防止には担体の介在が寄与するところが大きいと推測する。伊藤正夫先生訳

BMP2コート

1: Clin Oral Implants Res. 2005 Oct;16(5):563-9

 本研究の目的は、チタンインプラント表面に固着された骨誘導タンパク(BMP2)がインプラント周囲の骨造成を促進するかどうかを判定することである。10頭の雌性フォックスハウンド成犬に、すべての小臼歯抜歯3ヶ月後に実験的チタンスクリューインプラントを植立した。3種のインプラント表面を作成して、相互に評価した。すなわち、1.鏡面研磨の表面を持つインプラント、2.コラーゲンtype1でコートしたインプラント、3.コラーゲンtype1とコンドロイチン硫酸とBMP2でコートしたインプラントを用いた。インプラント周囲の骨再生は組織形態計測を行なった。すなわち術1ヶ月後と3ヵ月後に骨インプラント接合率(BIC)と新生骨の骨密度(BVD)を計測した。1ヵ月後では特に有意なBICの増加は認めなかったが、BVDはコートしたインプラントが有意に高い密度を示した。コラーゲンのみとBMP2を加えた群間の差は認めなかった。3ヶ月後ではBICは2.と3.のグループで1.よりも有意に高く、BVDも同様であった。

 すなわちコラーゲンコートはBICと骨新生を増強するが、BMP2の添加はそれをさらに増強することはないという結論であった。
伊藤正夫先生訳

BIOPEX-R骨新生機転

Microsc Res Tech. 2007 Oct 17;

本研究は、自己硬化性3燐酸カルシウムセメント(BIOPEX-R)をインプラント植立部位へ移植した時の、組織学的所見を検索することである。生後4週のWistar系雄性ラットの上顎に植立したインプラントに隣接して規格化された骨欠損を形成した。骨新生を次の2箇所で観察した。すなわち1.歯槽骨に隣接したBIOPEX-Rの表面、2.移植剤とインプラントの界面である。1.では酒石酸抵抗性フォスファターゼ(TRPase)反応性破骨細胞が,

BIOPEX-R表面に集積しインプラントの方向へ移動した。その後アルカリフォスファターゼ(ALPase)陽性骨芽細胞が新生骨マトリックスを形成し、破骨細胞とのカップリングを示した。一方で2.では、多数の破骨細胞が、初期にインプラントと移植剤の狭いギャップに侵入し、ふたたびALPase陽性骨芽細胞が破骨細胞とのカップリングを示し、骨吸収後に新生骨のマトリックスが形成された。透過型電子顕微鏡所見では、2.の領域においてインプラントと新生骨は、細胞数は少ないものの、直接接触していた。1.,2.領域ともに新生骨は組織学的に皮質骨に類似の形状を示した。またCa,P,Mg量は以前にそこに存在した皮質骨に類似していた。したがってBIOPEX-Rをインプラント周囲に移植した場合、皮質骨が形成されることがわかった。

解説:新生骨形成時に最初に骨吸収が生じて、それに誘発されて新生骨の器質形成が発生することは新知見であると思う。伊藤 正夫先生訳

自家骨をメンブレンで覆うエビデンス

Int J Oral Maxillofac Implants. 2007 May-Jun;22(3):390-8.Click here to read

自家骨移植は骨欠損に対する骨移植の術式としては標準的な方法であるといえる。メンブレンによって自家骨を覆う(GBR)は続いて起こる吸収を防ぐことを期待する。GBRは臨床的に非常に良い結果をもたらしている。しかし合併症やコストがかかるなど不利な点も否めない。しかしながら最も重要なことは結果をコントロールしづらいことである。本論文の目的は自家骨オンレーグラフトにメンブレンを用いることにより骨吸収を防ぐことのエビデンスの評価をおこなっている。ヒトと動物合わせて182の文献から検索している。ほぼ全ての著者がメンブレンを用いることにより骨吸収を防ぐことにエビデンスがあると述べている。しかしこれらを結論付けることは難しく、動物実験ではエビデンスを認めるかもしれないが、ヒトに関しては困難であるとしている。ほとんどの実験データは検体数が小さすぎる。さらに骨移植部位の隔離が上手くなされておらず、有意差を検討するには曖昧すぎる懸念がある。結論としては現時点では自家骨をメンブレンで被覆することにより骨吸収を防ぐということはエビデンスがあるとは言い切れないとしている。自家骨移植にメンブレンを併用することは無いが、多くのケースで骨吸収してしまうのは経験上避けられないと考えられていたことなので、今後もメンブレンの併用についても検討の余地があり、エビデンスがあるならば使用をしていくべきであると思われる。

ビスホスホネートとインプラント

Int J Immunopathol Pharmacol. 2007 Jul-Sep;20(3):455-66.

ビスホスホネートは幅広く使用されて、骨の吸収を抑えることにより骨密度の減少を抑制する製剤である。さまざまな骨疾患に使用され、多発性骨髄腫、骨粗しょう症の治療薬として使うほか、ガンの骨転移のときにも用いられる。本論文では、ビスホスホネートの物理化学的な性質と生物学的な活性とメカニズムについて、実験的にin vitroとin vivoの両方で検証している。歯槽骨における薬剤の効果のプロセスは骨移植に対しては効果的に働いていると考えられる。しかし、注意すべきことはアミノビスホスホネートの全身投与後3-4年にわたって顎骨壊死が出現する可能性があることである。この副作用はアミノビスホスホネート以外の投与では出現しないことが分かっている。本稿ではビスホスホネート投与患者のガイドラインを定義することである。ガイドラインのいずれにしろ整形外科にかかっており、骨粗しょう症などで治療を受けている患者に関しては十分注意する必要がある。放射線性壊死なども含めて、一般歯科治療でも知らずに手を出すと痛い目に合うことは自明なので十分に注意するべきである。

ncHAの骨補填材

Clin Oral Implants Res. 2007 Sep 21

本論文の目的は、歯槽骨欠損に対してnano-crystalline hydroxyapatite (ncHA)の骨補填材にて修復したものを検討した。方法は前歯部骨欠損を伴う14人の患者に対して、10人は6-7か月間の治療期間で、また4人に対してはインプラント植立と同時に骨添加をおこなった。添加したncHAはチタンメッシュにて覆った。6-7か月後に臨床所見、組織学的、レントゲン的に評価した。結果としては1人に術後感染を認めて6週間後にチタンメッシュを除去した。7人に感染症状を伴わずに早期にチタンメッシュが露出した。歯槽骨の幅と高さは6か月間変化を認めなかった(P>0.5)。一方、著名な骨吸収を認めた(P=0.01)。補綴が入った24か月後ではインプラントの損失を認めなかった。6か月後に7人の患者から組織を採取したところ、形態学検査で周辺 (23.4%)と中心部(15.1%)と骨形態に著名な変化を認めなかった。欠損部の骨のコロニー形成の平均値は52.3%であった。結論としては、6か月後の組織学的な検査でncHAが少量認められた。ncHAによって歯槽骨の幅径は、量的にも質的にも十分に回復することができた。ncHAはOstimとして海外ですでに販売されているが、ペースト状で血液などと混合することなく使用することができる。7-10日で血管新生がも認めることも知られており、日本でも発売されることが望まれる製品の一つである。

自家骨移植をフィブリングルーで固定する

Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2007 Sep 25

本論文の目的は自家骨移植を血小板を多く含んだフィブリングルー(血液由来の糊)を用いて、犬歯部の歯槽頂骨欠損に対して骨添加とインプラント植立術を施行し、検討した。対象となる検体は6ヵ月の犬で、歯槽頂骨欠損を左右下顎に作り3か月の治癒期間を得てから各1本のインプラントを植立した。6mmのインプラント頚部骨欠損に対して、自家骨とフィブリングルーとフラップで覆うのみのコントロール群とで6か月後に比較検討した。インプラント植立のみの郡では、垂直的骨高は(0.6 +/- 0.4 mm)であった。一方、自家骨とフィブリングルーでの郡では4.2 +/- 1.0 mmと 63%の骨欠損の修復がなされていた。結論としては自家骨とフィブリングルーの併用によって有意に骨増大がなされることが分かった。解説、GBRを用いての比較であるが自家骨のみの検討群が無いなど、デザインに問題はあるが、GBR時の骨をフィブリングルーで維持することは簡便で、かつ有効であることは自明であるが、それを数値をもって示したことに関しては興味深い報告であった。

単独植立における骨増加処置と満足度

Clin Oral Implants Res. 2007 Sep 21

本論文の目的はシングルスタンドのインプラントを行う際に、様々なボーンオーギュメンテーションを行い比較検討した。被験者は上顎、唇側に骨のギャップがある93人の患者である。すべての患者は部分的骨欠損を伴い、インプラント植立前に骨移植が必要であった。上部構造とポーセレンクラウンを装着して1年後に補綴医により、その審美状態を評価した。結果としては「The Implant Crown Aesthetic Index」の平均値が4.8で66パーセントが許容範囲内であった。患者アンケートの満足度の平均値は8.5で、満足度は100パーセントであった。患者の満足度と医療者側の満足度には正の相関関係があった。結論としては、インプラント周囲軟組織はインプラント支持のクラウンにおいて満足度が低い傾向が患者、術者双方に認めた。また、患者より術者側の方が満足度が低い傾向もあった。骨移植の詳細は検討してはいないが、術者が満足行く結果を提供すれば、患者はその結果に満足することが予想されるので、治療すべてにおいて妥協はすべきではないと結論づけられるのではないだろうか。

インプラントの減衰係数と予後

Clin Oral Implants Res. 2007 Sep 21

本報告はオッセオインテグレーションした後にインプラント体の減衰係数を調査したものである。55本の下顎骨に植立されたインプラントを3年間経過しているものを検討している。Osstellを用いて2方向から測定して調べ、骨量の形態をフラクタル分析で、骨レベルをperi-implant bone levelにて測定している。結論としてはperi-implant bone levelで沈下を測定しているが、レントゲンで見られるような骨梁のパターンとは相関関係を認めなかった。臨床的状態とOsstell の測定値では、長期により安定しているインプラントでは表示されるグラフがはっきりしており、またピークが緩い形態となっている。日常、安定したインプラントを測定することは殆ど無いが、定期的に測定することにより咬合性外傷のようなインプラントにかかっているストレスを早期に発見することができることが示唆される論文であった。

PRPと骨再生

The International Journal of Oral & Maxillofacial Implant

本論文の目的はPRPが骨増殖に及ぼす影響をウサギの頭骸骨を用いて検討している。ウサギの頭蓋骨に10mmの皮質骨欠損を作り、一群はPRPを用いて、もう一群は用いずに2,4,6,8週間後に組織学的に骨増殖を検討した。結果としては2,4,6週間では有意に違いを認めたが、8週間以後は有意な違いを認めかなかった。PRPは4週間までには著名に変化を認めるが、それ以後はあまり変化がなかった。PRPは効果を認めないとの説が有力になってきているが、初期の細胞増殖に関しては効果を認めるが、長期的には無いとの説を裏付ける報告であった。